永久歯が黄ばんだり、黒ずんだりするのは食生活の乱れや不十分な口腔ケアだけが原因ではありません。乳歯の不健康が永久歯に悪影響を及ぼしてその色を悪くすることもあります。今回は、乳歯の健康状態が悪くなると、永久歯の白さに悪影響を及ぼす理由や予防方法について解説します。
乳歯と永久歯の違いとは
乳歯と永久歯には、次に挙げるような違いがあります。
生え変わるか生え変わらないかの違い
乳歯と永久歯の最大の違いは「生え変わる」か、「生え変わらない」かです。私たちの歯は原則として再生することはありませんが、乳歯においては永久歯への交換が起こります。最初の乳歯が生えてくるのが生後6~8ヶ月くらいで、3歳くらいには乳歯列が完成します。そして、12歳くらいまでにはすべての乳歯が抜け落ちるので、乳歯の寿命は長くても12年程度といえるでしょう。一方、永久歯は6歳くらいから生え始めて、長ければ一生涯使い続けられるので、永久歯の寿命は80年くらいになることも珍しくありません。
歯が生え変わるか、生え変わらないかの違いは、歯の寿命にこれほどまでに大きな違いをもたらすのです。
乳歯と永久歯の本数の違い
乳歯の標準的な本数は全部で20本、永久歯の標準的な本数は28本で、親知らず(第三大臼歯)を含めると32本になります。ただし、本来は生えてこない過剰歯(かじょうし)や、本来よりも数が少なくなる先天性欠如(せんてんせいけつじょ)があると、総本数は変わってくるのでご注意ください。
乳歯と永久歯の見た目の違い
乳歯は、歯質が未成熟であることから永久歯よりもやや白いのが一般的です。未成熟だと、なぜ、白く見えるのか不思議に思われる方も多いことでしょう。これは、歯の一番外側を覆っているエナメル質が成熟するほど透明度を増す性質を持っているため、その下にある黄色い象牙質を透過しやすくなるからです。つまりエナメル質が未成熟な乳歯は、黄色い象牙質が透けて見えないので永久歯よりも白く見えるのです。
そのほかに、乳歯と永久歯の見た目の違いに大きさもあります。当然ですが乳歯のほうが永久歯よりも小さくなります。乳歯と永久歯が隣り合う混合歯列になると、大きさの違いがよくわかります。
乳歯と永久歯の生える順番と生え方の違い
乳歯と永久歯はともに生えてくる順番が決まっていますが、どの歯から生えてくるかは違っています。最初に生えてくるのは、乳歯の場合は下の前歯で、永久歯の場合は下の奥歯です。生え方も乳歯の前歯はほぼ垂直に生えるのに対し、永久歯の前歯は少し前方に傾いた形で生えてくるので、乳歯と永久歯の見分け方のポイントにもなります。お子さんの歯の生え変わりの時期には、そうした生え方の違いにも注目してみましょう。
乳歯が永久歯の白さに影響を与える理由
乳歯の健康が害されると、次のような理由から永久歯の白さに悪影響が及びます。
乳歯の虫歯が永久歯にうつる
乳歯の虫歯は軽度から中等度であれば、隣の歯にうつるだけですが、重度になると、すぐ下に控えている永久歯にまでうつる場合があります。その結果、永久歯が虫歯になって茶色く変色したり、エナメル質の発育が正常に進まず、くすんだ色になったりします。
乳歯の虫歯が永久歯の発育を邪魔する
重症化した乳歯の虫歯では、根の先から細菌などの汚染物質が漏れ出て、すぐ下に控えている永久歯の発育を邪魔する場合があります。これを専門的には「エナメル質形成不全症」と呼び、エナメル質が正常に発育せず、形がデコボコになったり、茶色に変色したりします。
乳歯が早くに抜け落ちると永久歯の生え方に異常が生じる
外傷や虫歯の重症化で乳歯が早い時期に抜け落ちると、永久歯が生えてくるためのスペースが塞がれてしまいます。その結果、永久歯がおかしな位置で、あるいは斜めに生えることにより、永久歯が不潔になりやすくなり歯の着色が促されるケースがあります。
乳歯の健康を保つ方法
ここまで、乳歯の健康が害されることで永久歯の色や形に異常が生じる理由について解説してきました。永久歯を美しく、健やかに成長させるためには、乳歯の健康に気を配る必要があります。そこで最後に、乳歯の健康を保つ方法についていくつかご紹介します。
乳歯の虫歯は絶対に放置しない
乳歯はもちろん、永久歯の健康まで真剣に考えるのであれば、乳歯の虫歯を放置することだけは絶対にしないようにしてください。虫歯はそもそも自然に治るものではなく、放置すればどんどん進行していきます。乳歯はいずれ永久歯に生え変わりますが、乳歯の虫歯による影響は皆さんが想像しているよりも大きく、前述したように永久歯の発育まで邪魔してしまいます。
早くから歯科医院に通い始める(定期検診)
虫歯になったら歯科医院で治療を受けるのは当然として、発見するのが早ければ早いほど、永久歯への悪影響も抑えられますので、専門家による定期的なチェックを受けることをおすすめします。具体的には歯科医院の「定期検診」で、小さなお子さんであれば3ヶ月に1回くらいの頻度でチェックを受けるようにしましょう。歯科医院に通う習慣を早期に身につければ、虫歯をはじめとした乳歯の異常を早期に発見できます。
正しい口腔ケア方法を身につける
虫歯は予防するに越したことはありません。いずれは生え変わりを迎える乳歯でも、できる限り虫歯にならないように努めましょう。そのためには正しい口腔ケア方法を身につけるのが一番です。
歯科医院の定期検診では、口腔ケアの専門家である歯科衛生士から「一人磨き」と親御さんによる「仕上げ磨き」のレクチャーを受けられます。一人磨きは数年かけて身につけていくものであり、早い時期から正しい方法を指導してもらえば、身につけるまでの期間の短縮も可能となります。ちなみに、乳歯と永久歯が同時に生えている混合歯列期は6歳くらいから始まるのですが、それまでに一人磨きの方法をしっかり身につけられると、乳歯はもちろん、永久歯の虫歯のリスクも大きく減少させられます。今回のテーマでもある永久歯の白さを保つ上でもよい作用が生まれるでしょう。
歯科医院で予防処置を受ける
乳歯の段階で歯科医院で受けられる予防処置としては、シーラントとフッ素塗布、クリーニングが挙げられます。
■シーラント
シーラントは、汚れがたまりやすい乳歯の奥歯の溝をプラスチック材料で平らにする処置です。乳歯の奥歯は、永久歯よりも複雑な溝があるため、あらかじめ平らにしておけば、歯磨きやすくなり虫歯リスクを抑えられます。シーラントでは歯を削ることはありませんし、痛みも伴いません。
■フッ素塗布
高濃度のフッ化物入りジェルを歯に塗るフッ素塗布は、子どもでも受けられます。定期検診に通い始めるタイミングから定期的に受けるようにしましょう。虫歯菌に負けない強い歯を作れます。
■クリーニング
自宅での歯磨きだけでは落とせない汚れがありますので、それらは歯科医院のクリーニングで取り除きましょう。お口の中を定期的にリフレッシュすれば虫歯リスクを減らせます。
まとめ
今回は、乳歯の健康が永久歯の白さに関係する理由について解説しました。乳歯の虫歯が重症化すると永久歯の白さに悪影響をもたらします。それだけではなく、永久歯の発育を邪魔することから、乳歯の虫歯は絶対に放置せず、早期発見・早期治療に努めましょう。乳歯の健康を保つ方法は、ぜひ、ご紹介した記事の内容を参考に実行してみてください。
ハーツデンタルクリニック西白井駅前の院長。城西歯科大学(現 明海大学)卒業。仕事でうれしい時は思うような治療ができ、患者様に喜ばれ、お礼を言われたとき。
ハーツデンタルクリニック西白井駅前
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