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お子様の歯を守る、小児歯科
小児歯科は、お子様を対象とした歯科診療科目ですが、ただむし歯治療を行うわけではありません。
大切な歯がむし歯にならないよう予防処置を行ったり、噛み合わせの悪化を予防したり、永久歯への正しい生え替わりを促したりと、お子様の歯の成長を支える様々な治療と処置を行います。
永久歯が正しく生えそろうように、いつまでも健康な歯でいられるように、その基盤作りのお手伝いをさせていただきます。
初めて小児歯科を受診するときのポイント
初めて小児歯科を訪れる際、患者様であるお子様も親御様も緊張されることが多いでしょう。初診の体験が不安や恐怖に繋がると、それ以降の歯科受診を嫌がる原因となるため、初めての診療は特に慎重に対応することが重要です。
【ポイント1】初めての受診は午前中に
小さなお子様は体力が限られており、午後になると疲れや眠気が出やすくなります。そのため、初めての歯科受診はお子様が最も元気で落ち着いている午前中がおすすめです。午前中の診療であれば、歯茎の検査や治療に対する不安も軽減される可能性があります。親御様は予約の際に時間帯にも配慮しましょう。
【ポイント2】嘘はつかない
歯医者さんに行くことを嫌がるお子様に対し、「今日は何もしないから」といった嘘を使って説得するのは避けましょう。初めての受診であっても、お子様にはわかりやすく説明し、「先生が虫歯をしっかり見てくれるよ」などと、ポジティブな言葉で受診の意義を伝えるようにしましょう。嘘をついてしまうと、かえって歯医者さんへの不信感を抱く原因となるため注意が必要です。
【ポイント3】診療前はリラックスしましょう
診療までの待ち時間は、特に小さなお子様にとって緊張しやすいものです。親御様が一緒に絵本を読んだり、お気に入りのおもちゃを持参したりすることで、お子様の気持ちをリラックスさせてあげましょう。また、小児歯科では待合室の環境が工夫されていることが多いため、そのような環境を活用し、安心して診療に臨めるよう配慮してください。
【ポイント4】たくさん褒めて励ます
初診では基本的に大きな治療を行うことはありませんが、それでもお子様にとって歯医者さんでの体験はストレスを感じる場面があるかもしれません。治療の過程で泣いてしまうこともありますが、診療中や診療後には「頑張ったね!」とお子様をたくさん褒めてあげてください。褒められることで自信がつき、「また頑張ろう」と思えるようになります。特に、小さな成功体験の積み重ねが、将来の定期的な受診へのモチベーションに繋がります。
初診を成功させる鍵は「安心感」
お子様が初めて小児歯科を受診する際、親御様が注意すべきポイントを押さえることで、歯科医院への信頼感を高め、次回以降の受診をスムーズにすることができます。親御様とお子様が安心して診療に臨めるよう、歯科医院とのコミュニケーションを大切にしましょう。定期的な受診を通じて、健康な噛み合わせと美しい笑顔を育むお手伝いができれば幸いです。
むし歯は伝染する

小さなお子様がいらっしゃる場合は、口移しなどで食べ物を与えないように気をつけてください。問題は、一旦強く感染してしまうと、ブラッシングくらいではミュータンス菌を減らすことはできず、”一生ミュータンス菌を抱えて過ごしていかなければならない”というリスクにあります。
逆に、上記の期間を無事に過ごす事が出来れば、サングイス菌(むし歯にとっての善玉菌)が定着しやすくなり、むし歯になりにくい口腔となっていくのです。
お子様のむし歯予防
大切な歯磨きのしつけ
食後の歯磨きは、歯の病気の原因となるプラーク(細菌の塊)を取り除き、お口の健康を守る大切な習慣です。お子様の発達に合わせて歯磨きのしつけをしてください。
赤ちゃんの歯磨き指導方法
赤ちゃんの歯磨きは、最初の歯が生え始めたタイミングから始めることをお勧めします。柔らかい毛先の赤ちゃん用歯ブラシを使い、歯と歯茎を優しくマッサージするように磨いてあげましょう。このとき、歯磨き粉を使用する必要はありませんが、使用する場合はフッ化物濃度が低い赤ちゃん用歯磨き粉を選ぶと安心です。歯ブラシの使用が難しい場合は、清潔なガーゼを指に巻きつけて、歯と歯茎を軽く拭く方法も効果的です。
赤ちゃんが歯磨きを嫌がる場合は、楽しい雰囲気を作ることがポイントです。歌を歌ったり、歯ブラシをおもちゃとして使ったりして、楽しい時間に変えましょう。また、親御さんが積極的に歯磨きをする姿を見せることも重要です。赤ちゃんは親の行動を真似する傾向があるため、親御さんが楽しそうに歯磨きをすることで自然と興味を持ちます。
さらに、定期的に歯科医院を受診することも忘れないでください。最初の歯が生えたタイミングで歯科医の診察を受けると、赤ちゃんの口腔内の健康状態をチェックしてもらえます。また、歯磨きに関するアドバイスも受けられるため安心です。赤ちゃんの歯磨きは、健康な歯と歯茎を守るための基礎となります。正しい方法で楽しく続けていきましょう。
年齢別のポイント
1歳 | 歯ブラシを持たせて慣れさせましょう。 |
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2歳 | 自分で磨こうとします。一緒に磨いて真似をさせると歯磨きが習慣になります。 |
3歳~5歳 | 乳歯が生えそろう時期。自分で磨くようにしますが、磨きは不十分です。必ずチェック磨きをして、磨き残しがないようにします。 |
6歳以上 | 永久歯が生えます。子どもの「自分で磨く」気持ちを大切にしましょう。仕上げのチェック磨きは最初の永久歯(六歳臼歯)を中心にしてください。 |
仕上げのチェック磨きを忘れずに!
子どもがきちんと歯磨きができるようになるのは、かなり大きくなってからです。それまでは、お母さんが必ずチェック磨きをしてあげてください。歯と歯のすき間、歯の裏側、奥歯の磨きにくいところなどは、特にていねいに磨いてあげましょう。
毎日のチェック磨き(仕上げ磨き)がお子様の歯を守ります。親子のコミュニケーションにもなります。
子供の歯と口の病気
むし歯の原因
むし歯を防ぐには、むし歯になる4つの条件がそろわないように注意することがポイントです。
- 歯の質
- 細菌
- 糖分
- 歯を磨くまでの時間
むし歯は乳歯が大好き
乳歯は大人の歯(永久歯)より小さく柔らかいものです。さらに子どもはおやつなどで糖分を口にする機会が多く、自分で上手に歯磨きができないことがあり、たいへんむし歯にかかりやすいのです。
加えて、乳歯のむし歯は進行がとても速く、むし歯にかかっても自覚症状が出にくく、痛みを感じたときには歯髄炎にまで進んでいることもあります。また、上の前歯や奥歯は特にむし歯になりやすいので、家族の方が注意して見てあげることが必要です。
子供のむし歯の予防処置
1. 歯を良く磨くこと(当たり前ですね)
子どもの歯に適した磨き方を1人ひとりの歯の生え方に合わせて指導しています。磨き残しがないように!がんばろう!
2. フッ素入りの歯磨き剤を使うこと、そして”うがい”を軽く2,3回。これが重要なポイントです!
最近の研究では、歯磨きの後で、あまり『うがい』をしない子供の方がむし歯の発生が少ないと言う研究も発表されました。
歯科医院で塗布されているフッ素は歯磨き剤のそれより9倍程度の濃度が有りますので、6ヶ月に一度くらいは、歯科医院で塗布を受けるのも効果的でしょう。
3. シーラント
奥歯の溝をレジン(プラスチック)という素材で埋めてむし歯を防ぐ方法です。時間が経つと剥がれてしまうので、定期検診で溝を埋め直しておく必要があります。特に生えて間もない六歳臼歯はむし歯になりやすいので、シーラントは非常に効果があります。
4. キシリトール
キシリトールは天然の甘味料です。
主な原産地はテレビCMでもお馴染みのフィンランド等の北欧で、私たちの身近なところではイチゴなどにも含まれていますし、私たち自身も自分達の肝臓で一日に15グラム程度のキシリトールを作っています。
キシリトールはWHO(世界保健機構)から安全性が認められている安全な甘味料です。
砂糖と同程度の甘味を持っていながら、カロリーは40%も低いのです。
元気な歯キシリトールによる予防方法で一番効果的なものは、食後にキシリトールを摂取する方法です。それを習慣化して、継続的に行うのが最大のポイントです。たまに忘れることがあっても良いので、長期間、継続的にガムやタブレットで食後にキシリトールを摂取することです。
継続することにより、むし歯予防につながります。
また、国の政策としてフィンランドでは、学校での食後にキシリトール入りのガムやタブレットが配布され、徹底したむし歯予防を行っています。食後にキシリトールを摂取する習慣があるフィンランドでは、15年間に実に約80%ものむし歯を減らすことに成功しましたそうです。
この効果を試さない手はありませんね。
フッ素塗布の効果と頻度
歯科医院で受けられるフッ素塗布では、高濃度のフッ化物(9000ppmF)を使用したジェルを歯に塗布します。これは市販の歯磨き剤の約6倍の濃度で、歯を強化する効果が非常に高いのが特徴です。フッ素塗布は歯科医師や歯科衛生士などの専門家が施術するため、安全で効果的です。この高濃度フッ素の使用により、虫歯を予防する効果が大幅に向上します。
フッ素塗布の頻度としては、3–4か月に1回程度が適切です。この間隔で行うことで、再石灰化を促進し、歯を酸への耐性が高いフルオロアパタイト構造に変化させることができます。毎日行う必要はなく、適切な間隔での塗布が効果的です。
また、自宅ではフッ化物配合の歯磨き粉を使うことで、フッ素塗布の効果をさらに高めることができます。日常的な口腔ケアと歯科医院での専門的なケアを組み合わせることで、虫歯のリスクを大幅に軽減できます。定期的なフッ素塗布を通じて、健康な歯を長く維持しましょう。
子供の口臭対策方法
子供の口臭の原因はさまざまですが、日常の適切な口腔ケアが最も重要です。毎食後の歯磨きを習慣づけ、歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシを使用して食べかすやプラークをしっかり除去しましょう。
さらに、舌の清潔を保つことも口臭予防に効果的です。舌の表面にたまる舌苔(ぜったい)は口臭の原因となるため、柔らかい舌ブラシや歯ブラシで優しく掃除するように心がけてください。また、水分摂取も口臭対策に効果があります。唾液は口腔内を洗浄し、細菌の繁殖を抑える働きがあります。特に、運動後や暑い日には十分な水分補給を意識しましょう。
食生活の見直しも重要で、繊維質の多い野菜や果物を積極的に取り入れると唾液の分泌が促進され、自然と口腔内を清潔に保つことができます。子供の口臭対策は、親御さんと子供が一緒に取り組むことで習慣化しやすくなります。日々の小さな工夫が健康な口腔環境を築く鍵となるため、ぜひ実践してみてください。