お口の悩み

口腔(口の中)が不潔になって引き起こされる病気とは?

 

口腔(口の中)が不潔になって引き起こされる病気とは?

口腔(口の中)は身体の入り口で、大切なものを取り込む場所です。そのような口の中が不潔になると、実は、さまざまな病気のリスクが上昇します。

 

今回は、口の中が不潔になると何が起き、どのような病気になってしまう可能性があるのか、さらには病気が誘発されるメカニズから、口腔を清潔に保つための方法までを解説します。

 

口腔が不潔になると起こること

 

口腔が不潔になると起こること

 

口の中が不潔になると、まず何が起こるのかについてご説明しましょう。

 

歯垢・歯石・舌苔が堆積する

口の中には汚れがたまりやすい場所があります。それは歯と歯周ポケット(歯と歯茎の境目の溝)、舌の表面です。口の中が不潔になると、まずこれらの場所に歯垢や歯石(歯垢が石のように硬くなった物質)、舌苔(ぜったい)と呼ばれる汚れが堆積します。

歯垢と舌苔はほぼ同じ成分で、水分と細菌によって構成されています。

 

細菌・真菌が繁殖する

歯垢や歯石、舌苔は細菌の温床となり、放置するほど病原性が高まります。つまりは、いろいろな病気の原因となる細菌や真菌(しんきん)が繁殖して、口の中で悪さを始めるのです。ちなみに真菌はいわゆる“カビ”です。食べ物を常温で放置していると表面にカビが生えることがありますが、それとほぼ同じものが口の中にも生じます。これだけを聞いても口腔を不潔にすることが、どれほど危険なことなのかわかるのではないでしょうか。

 

口腔が不潔になってリスクが上がる病気

 

口腔の衛生状態が低下して細菌・真菌が繁殖すると、次に挙げるような病気のリスクが上昇します。

 

虫歯

ミュータンスに代表される虫歯菌が歯に感染して、エナメル質や象牙質を溶かしていきます。風邪やインフルエンザと同じ感染症の一種で、自然には治らない病気なので放置するのはよくありません。歯に穴が開いたり、不自然な黒ずみが認められたりしたら、すぐに歯科医院を受診しましょう。

 

歯周病

歯周病は、P.g菌に代表される歯周病菌によって歯茎が炎症を起こす病気です。歯茎の腫れや出血がお主な症状で、進行すると顎の骨まで破壊されます。口腔衛生の悪い状態が続くと、口の中で繁殖した歯周病菌が全身へと広がり、さまざまな全身疾患を誘発します。これに関しては、次の章で詳しくご説明します。

 

口腔カンジダ症

カンジダ・アルビカンスと呼ばれる真菌(カビ)が原因で発症するお口の病気です。口腔に白いカビが生えて、粘膜において炎症反応を引き起こします。入れ歯のような大型の装置を装着している人に起こりやすい病気です。

 

口内炎

口内炎の発症も実は口腔衛生状態と強く関連しています。私たちの口の中の粘膜には、多少傷付いたとしても自然に治るシステムが備わっていますが、口腔が不潔だと粘膜の傷口に細菌などが侵入して口内炎が発症します。口内炎がなかなか治らなかったり、繰り返し発症したりしている人は、口腔衛生状態を良好に保つことから始めるとよいでしょう。

 

風邪・インフルエンザ

口腔とノド(咽頭・喉頭)は連続しています。口の中が不潔になれば、すぐ奥にあるノドの感染症リスクが上昇して、風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。

 

誤嚥性肺炎

高齢の方は飲み込む力が衰えて、誤嚥(ごえん)することが多くなります。誤嚥とは、唾液や食べ物が食道ではなく気道へと送り込まれてしまう現象で、高齢の方が食事中にむせたり、咳き込んだりしたときには、誤嚥である可能性が疑われます。

 

そして、口の中が不潔だと、唾液や食べ物に細菌・ウイルスが付着してしまい、それが気道へと送り込まれると肺炎を誘発する場合があります。誤嚥性肺炎は高齢の方の主な死亡原因にもなっていることから十分な注意が必要です。

 

歯周病が原因で誘発される全身の病気

 

歯周病が原因で誘発される全身の病気

 

口腔衛生状態の不良によって口の中の歯周病菌が増えると、それが歯茎の血管に入り込み、全身を巡るようになります。その結果、次のような全身の病気を引き起こす場合があります。

 

糖尿病

糖尿病は、血糖値が高くなる病気で、生活習慣病のひとつとして有名です。歯周病菌が血管内に入り、炎症に関わる物質がたくさん作られると、血糖値を下げるインスリンの効果が弱まってしまい糖尿病のリスクが上昇します。もう、すでに糖尿病にかかっている場合は症状の悪化につながります。

 

動脈硬化・狭心症

血管に侵入した歯周病菌が炎症反応により動脈の壁を硬くして動脈硬化となる場合があります。また、歯周病菌がもとになって形成されるプラーク(歯垢)が心臓の血管の壁を狭くすると狭心症になってしまいます。

 

脳梗塞・心筋梗塞

動脈硬化や狭心症の症状が認められる血管では、血の塊である血栓(けっせん)によって血管が塞がれてしまうリスクが極めて高くなります。

そうした血管が塞がれる現象が脳で起これば脳梗塞、心臓で起これば心筋梗塞となり、生死に関わるような深刻な事態を招きます。ちなみに、歯周病菌が原因で血管壁に形成されたプラークは、剥がれた際に血栓となる場合が多くあります。

 

認知症

重度の物忘れなどを主症状とするアルツハイマー型認知症において、歯周病がリスク因子となることが最近の研究で判明しました。歯周病菌は、アルツハイマー型認知症の根本的な原因となる「アミロイドβ(ベータ)」と呼ばれる物質の形成を促進することがわかったのです。

 

一見すると何ら関係のないような全身の病気でも、実は歯周病菌と直接的な関連が認められるケースが多々あります。

 

早産・低体重児出産

血流に乗った歯周病菌は、妊婦の方の子宮にまで到達します。そうなると、炎症反応によって出産に関わる筋肉が刺激され、早産・低体重児出産のリスクが上昇する点にご注意ください。

 

口腔を清潔に保つための方法

 

口腔が不潔になって誘発される病気について解説してきましたが、適切なケアによって清潔に保てれば、それらのリスクを限りなくゼロに近づけることが可能です。以下に挙げる口腔ケアを実践して、お口だけでなく全身の健康維持・増進に努めましょう。

 

歯磨き・舌磨き(セルフケア)

口腔を清潔に保つ上で最も重要なのは、歯磨きやうがい、舌磨きなどのセルフケアです。歯科医院でブラッシング指導を受けて、最適といえるセルフケア方法を身につけましょう。舌磨きに関してはあまり実践していない方も多いと思いますので、その必要性も含め、歯科衛生士にレクチャーしてもらうのがよいといえます。

 

クリーニング・スケーリング(プロケア)

セルフケアで落とせない汚れは、歯科医院でのクリーニングやスケーリング(歯石除去)で取り除きましょう。3ヶ月に1回くらいの頻度でプロフェッショナルケアを受ければ、口腔衛生状態も良好に保ちやすくなります。

 

唾液の量を増やす

口腔乾燥は、お口の中を不潔にします。口腔を潤す唾液には抗菌作用や殺菌作用、自浄作用などが期待できるからです。普段からドライマウスに悩まされている方は、唾液線マッサージ(お口の内側に複数ある唾液腺をマッサージし、刺激することによって唾液を出やすくする)を行ったり、ガムを噛んだりして唾液の分泌量を増やすようにしてください。

 

食習慣の改善

食事の内容によっても、お口の中の衛生状態は大きく左右されます。たとえば、歯の表面に残りやすいネバネバした食べ物は、唾液による自浄作用では洗い流されず、いつまでも残ってしまいます。また、チョコレートやキャラメルは糖質が豊富に含まれており虫歯のリスクが極端に高まるため、日頃から控えるようにしましょう。間食の数が多くなることも、口腔衛生状態の悪化に直結します。

 

まとめ

 

口腔が不潔になると、その影響は全身にまで及び、さまざまな病気を引き起こす場合があるため十分に注意しなければなりません。日頃からお口を清潔に保ち、健康の維持・増進に努めていきましょう。

医療法人社団ハーツデンタルクリニック 院長(歯科医師、歯学博士)監修
永橋克史
監修者 歯科医師 永橋克史
ハーツデンタルクリニック西白井駅前の院長。城西歯科大学(現 明海大学)卒業。仕事でうれしい時は思うような治療ができ、患者様に喜ばれ、お礼を言われたとき。
ハーツデンタルクリニック西白井駅前
高田耕司
監修者 歯学博士 高田耕司
日本歯科麻酔学会認定医、歯学博士。麻酔での無痛治療を得意としている。
ハーツデンタルクリニック八千代中央駅前
加瀬武士
監修者 歯学博士 加瀬武士
ハーツデンタルクリニック谷塚駅前の院長。日本大学歯学部歯学科卒業。補綴学を専門分野としている。
ハーツデンタルクリニック谷塚駅前


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