顎関節症と親知らずに悩まされている方は日本人に多いです。どちらか一方の場合もあれば、両方のトラブルに見舞われているケースもあります。そこで気になるのが顎関節症と親知らずの関係性です。
ここでは、顎関節症の原因のひとつとして親知らずの抜歯が考えられるのかどうかや、親知らずを抜歯する際に注意すべき点などについて詳しく解説します。
親知らずの抜歯は顎関節症の一因になる
顎関節症の主な原因は、噛み合わせの不具合や歯ぎしりなどの口腔習癖です。これらが根本的な原因となって顎の関節に多大な負担がかかり、顎関節症を発症していきます。
ただ、顎関節症はそれほど単純な病気でもなく、その他様々な要因が絡み合って発症へとつながっていきます。そのひとつに、親知らずの抜歯もカウントされます。
なぜ親知らずの抜歯が顎関節症につながるのか
親知らずの抜歯により歯列の形態が変化する
親知らずを抜歯すると、当然のことながら歯列の中に隙間が生じます。親知らずは最大で4本生えてきますので、抜歯をする本数に応じてその隙間も大きくなります。つまり、親知らずを抜歯すると、歯列の形態が変化するとお考えください。歯列の変化はそのまま嚙み合わせの変化へとつながっていきますので、その形態よっては噛み合わせが悪くなり、顎関節症を引き起こす原因にもなり得るのです。
ただ、親知らずは歯列の中でも一番奥に生えている歯ですので、抜歯による歯列への影響は比較的少ないと考えられます。
嚙み合わせに参加していた親知らずの抜歯
注意すべきなのは、親知らずが噛み合わせに参加しているケースです。この場合、親知らずは他の歯と同様、ものを噛む際に大切な役割を果たしていますので、抜歯をすることによって噛み合わせ全体が大きく変わることがあります。
その結果、一部の歯に噛む力が集中してしまい、その影響が顎関節へと及んでいきます。こうしたケースでは、親知らずの抜歯が顎関節症の原因になるといえるでしょう。
抜歯によって左右の顎のバランスが崩れる
親知らずの生え方や大きさ、抜歯をする数によっては、抜歯後に左右の顎のバランスが崩れることがあります。左右にどちらに傾いたとしても、顎の関節にかかる負担はどちらか一方に偏りますので、典型的な顎関節症の原因となり得ます。
親知らずの抜歯すべてが顎関節症のリスクとなるのか
では、親知らずを抜歯をすると、そのすべてのケースで顎関節症のリスクとなり得るのでしょうか。答えはノーです。親知らずの抜歯が顎関節症の原因となるのは、上述したような3つのケースで非常に多くなります。逆に、3つのケースに当てはまらない親知らずの抜歯であれば、顎関節症の発症リスクは低いといえます。
顎関節症にならないための親知らずの対処法
親知らずの抜歯で顎関節症にならないためには、上述したようなケースを避けることが第一です。具体的にいうと、親知らずの抜歯によって歯列や噛み合わせ、顎の左右のバランス等が崩れてしまう症例です。そうしたケースで親知らずの抜歯を避ければ、顎関節症のリスクは減少することでしょう。
ただ、それでも親知らずを抜歯しなければならないケースもあります。それは親知らず自体がひどい虫歯にかかっていたり、既に智歯周囲炎を起こして周囲の歯や歯茎に悪影響を及ぼしている場合です。そうしたケースでは、抜歯後に歯列等が乱れたとしても親知らずを抜くことを優先させるはずです。その際、大切となるのは抜歯後に噛み合わせや歯列の乱れを修正することです。
きちんとした歯科医師であれば、そうした抜歯後の処置も踏まえて治療計画を立ててくれますのでご安心ください。
まとめ
顎関節症と親知らずの抜歯というのは、必ずしも直接的に関係はしていません。ですから、親知らずの抜歯すべてのケースで、顎関節症のリスクが高まるというわけでもないのです。その中でもやはり、歯列の形態を変化させたり咬み合わせを悪くしたりするケースでは、顎関節症のリスクが高まりますので、親知らずを抜歯するかどうかは十分な検討の上、実施する必要があります。

ハーツデンタルクリニック西白井駅前の院長。城西歯科大学(現 明海大学)卒業。仕事でうれしい時は思うような治療ができ、患者様に喜ばれ、お礼を言われたとき。
ハーツデンタルクリニック西白井駅前


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