日本人の国民病「歯周病」

歯周病は歯の周りの細菌が原因で歯ぐきが炎症を起こし、進行すると歯槽骨(歯を支えている骨)が溶かされて最終的には歯が抜け落ちてしまう恐ろしい病気です。歯ぐきから出血したり、歯がグラグラしている場合は、歯周病の可能性が高いです。口臭の原因にもなるので歯科医院を受診して早期発見、早期療が大切です。
日本人の国民病「歯周病」

右のグラフが示すように、どの年代をみても国民の多くが歯周病に罹患しています。、その最大の原因は生活習慣だと言われています。歯周病は歯ブラシのみでは進行を食い止めることは難しいので、その原因を明らかにし、具体的な対策を記載していきます。

歯周病の原因

歯の周りの細菌

歯の周囲の衛生状況が悪くなると、、歯垢(プラーク)と呼ばれる微生物のかたまりが多数付着します。その数は1mgあたり約1億個と想像以上の数微生物が活動をしています。歯周病の原因菌は、この歯垢の中に潜んでいるのです。

歯石

歯垢が石灰化した歯石も歯周病の原因のひとつで、歯石は歯ブラシだけで取り除くことはできません。気になる方は、私たちにご相談ください。

喫煙

タバコも歯周病を悪化させる要因の一つです。タバコを吸うと血液の循環が悪くなり、歯ぐきの再生能力が弱くなるため歯周病が進行してしまいます。

歯周病は強い自覚症状の出にくい病気で、様子を見ているうちに病気がかなり進行してしまっているケースも少なくない、恐ろしい病気です。

 

歯周病の段階

歯肉炎

歯肉炎
歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎のすきまに、歯垢や歯石がたまり、歯ぐきが炎症を起こす症状です。自覚症状はほとんどありませんが、歯ブラシでブラッシングすると、歯ぐきから出血することがあります。自覚症状が無いことが歯周病が悪化してしまう大きな理由のひとつです。だからこそ、歯科医院での定期チェックが大切です。

歯周病初期(軽度歯周炎)

歯周病初期(軽度歯周炎)
歯肉の腫れが大きくなり、歯槽骨が若干溶けてきます。骨が溶けることによって、歯周ポケット(歯と歯ぐきのすきま)が3~5mmとより深くなるため、この溝に細菌がたまりやすくなっており、歯周組織(歯の周りの組織)へ炎症が進んでいる状態です。

歯周病中期(中程度歯周炎)

歯周病中期(中程度歯周炎)
軽度の歯周炎が進行し、歯槽骨が約二分の一くらいまで溶けてきます。歯周ポケットが4~7mmとなり、歯がぐらぐらするようになり、硬いものが噛みにくくなることがあります。ブラッシング、歯石除去に加え、歯周外科などの処置が必要となることもあります。

歯周病後期(重度歯周炎)

歯周病後期(重度歯周炎)
歯槽骨は三分の二以上が溶け、歯周ポケットはかなり深く(6mm以上)なります。歯ぐきがブヨブヨと赤く腫れて、膿(うみ)が出てきます。歯槽骨がさらに吸収されるため、歯根が露出し、歯のぐらつきが大きくなります。このような状態になると、抜歯になる可能性が高くなります。

心臓病とも関係のある歯周病

心臓病とも関係のある歯周病

ある医学的調査によると、歯周病を患っている人は1.5~2倍の確率で、そうでない人よりも心臓病にかかりやすいそうです。そのため、心臓病が最大の死亡要因の1つとされるアメリカでは、歯周病予防に力を入れています。

歯周病と心臓病、この二つを結びつけるのが、歯周病の原因である歯垢です。歯垢(歯周病菌)が血流中に入りこんで血栓を作りだすことが、心臓病の原因の一つになるのです。これらの血栓は、動脈硬化などの原因にもなります。

糖尿病の原因にもなる歯周病

心臓病だけでなく糖尿病との関連も指摘されています。ある大学の調査によると、歯周病を患っている人は、そうでない人と比較して約2倍、重度の歯周病の人は、約3倍で糖尿病になりやすいことがわかっています。歯周病が続くと、細菌(
歯周病菌)が血中に入り込み、血糖値を下げるインスリンの働きの邪魔をすることが原因のようです。

もともと、糖尿病のある人が歯周病になると、糖尿病が悪化することは知られていましたが、歯周病は糖尿病を引き起こす危険因子の一つであることが調査によって証明されました。「時々、歯ぐきから血が出るくらいなら大丈夫」と安易に考えがちな病気ですが、心臓病や、糖尿病の原因にもなる、危険な病気のひとつなので健康を維持するために重視する必要があります。

むし歯も歯周病も、悪くなる前に治すのが最も効果的な治療になります。日頃から丁寧にブラッシングしながら、3か月に1度は歯科医院では定期検診を受けることをオススメいたします。

 

歯周病と口臭について

口臭の原因の多くは、歯周病など口腔内トラブルがもとで発生します。口臭は歯周病治療を適切に行うことで解消されることが多いです。それでは、どうして歯周病になると口臭が発生するのでしょうか。

それは、口腔内の嫌気性菌(細菌)が食べかすや粘膜細胞などのタンパク質を取り込み、分解することで、「揮発性硫黄化合物」という口臭成分を発生させるからです。

この「揮発性硫黄化合物」は、

  1. 硫化水素(卵が腐ったような臭い)
  2. メチルメルカプタン(たまねぎが腐ったような臭い)
  3. ジメチルサルファイド(キャベツが腐ったような臭い)

この3つが主要な成分です。この中でメチルメルカプタンが歯周病に関連すると言われています。歯周病が進行し、メチルメルカプタンが発生するとマスクをしていても臭いが漏れ出すほど強い匂いになります。

口臭を感じる場合には、歯周病を罹患している可能性がありますので、歯科医院で検査されることをおすすめします。

 

むし歯・歯周病危険度をチェック!

「8020運動」ってご存知ですか?

8020運動は、『80歳になったとき、自分の歯を20本以上残そう!』という運動です。ある調査によると、”80歳になったときに自分の歯を20本残せるか”との質問に、約75%の人が”自信がない”と回答したそうです。

歯を失う原因は、むし歯だけではありません。しっかり歯磨きをしていた人でも、日本人は、50歳を過ぎたあたりから急に歯を失い始める人が多いようです。先ほどお話した「歯周病」がその原因のひとつ。

「歯」の危険度チェックをしてください。

  • お酒を飲んだ日は、そのまま寝てしまうことがある
  • 甘いものが好きで、ジュースやアメなどいつも何か口にしていることが多い
  • 歯ブラシの毛がすぐに開いてしまう
  • 歯の間に物がよくはさまる
  • 歯ぐきが腫れたり血が出ることがある
  • 歯ぐきの色がピンクではなく、赤や赤紫になっている
  • 歯がのびてきた
  • 固いものが噛めない
  • 指で歯を押したり、強くかみ締めると歯がぐらつく
  • 指で歯茎を押すとブヨブヨしている
  • 口がネバネバする
  • 歯が浮いた感じがする

当てはまる項目が多いほど、歯周病になっている危険性が高いと言えます。歯周病は、むし歯のような強烈な痛みがないため、気づいた時にはだいぶ進行してしまっているものです。

1つか、2つでも当てはまるものがありましたら、ライフスタイルの改善にも気をつけながら、一度、検診にいらっしゃってください。