インプラントは構造、使用する材料、インプラント体の形状によっていくつかの種類に分けられます。

 

インプラントの構造による分類

 

インプラントの構造による分類

 

インプラントの種類は、構造の違いによって大きく「ワンピースタイプ(1ピースタイプ)」と「ツーピースタイプ(2ピースタイプ)」の2つに分けられます。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、患者様の口腔内の状態や噛み合わせの条件、治療計画によって最適なものが選ばれます。

 

ワンピースタイプ(1ピースタイプ)

 

ワンピースタイプは、人工歯根(フィクスチャー)と支台部(アバットメント)が一体となっている構造のインプラントです。1つの部品で構成されるため、手術時に部品を連結する工程が不要で、構造的に単純なのが特徴です。

 

ワンピースタイプは主に骨量が十分で、骨質が良好な患者様に適用されます。接合部分がないため、細菌の侵入リスクが低く、感染によるトラブルが少ないといわれています。また、治療期間が比較的短縮できるケースもあります。

 

ただし、一体型のため角度の調整が難しく、歯並びや噛み合わせに合わせた細かな調整を要する症例には不向きな場合があります。歯茎の条件や埋入位置によっては、ツーピースタイプが適していることも多いため、診査・診断が重要です。

 

ツーピースタイプ(2ピースタイプ)

 

ツーピースタイプは、人工歯根とアバットメントが分離している構造です。世界的にも主流で、多くの歯科医院で採用されているのがこのタイプです。

 

ツーピースタイプの大きな特徴は、人工歯根の埋入後にアバットメントを連結するため、角度や高さの調整がしやすい点です。歯並びや噛み合わせに合わせて、上部構造(被せ物)を理想的な位置に装着できます。

 

また、2回法と呼ばれる方法では、まず人工歯根を骨に埋入し、骨と結合する期間を設けてから二次手術でアバットメントを装着するため、治療の成功率が高まりやすいとされています。一方で、連結部が増える分、適切なメンテナンスを怠ると、細菌感染のリスクが高くなるため、定期的なチェックが重要です。

 

インプラントの材料による分類

 

インプラントの材料による分類

 

インプラントの種類は、使用される材料によっても分けられます。ここでは、インプラント体(人工歯根)の材料と、上部構造(人工歯)の材料を分けて解説します。

 

インプラント体(人工歯根)の材料

 

純チタン製インプラント

現在、世界中で最も多く使用されているのがチタン製のインプラントです。チタンは生体親和性が高く、骨と強く結合する性質(オッセオインテグレーション)を持つため、インプラント治療に適しています。腐食しにくく、金属アレルギーを起こしにくい点も大きなメリットです。

 

チタン合金インプラント

純チタンに他の金属を加えた合金もあります。強度が高く、骨質が硬い部位や噛み合わせの負担が大きい部位に用いられることがあります。適応範囲が広く、長期的な使用実績も豊富です。

 

ジルコニア製インプラント

近年注目されているのがジルコニア製のインプラントです。白色で審美性に優れており、金属アレルギーのリスクもさらに低いのが特徴です。前歯部など、見た目にこだわりたい患者様に選ばれることがあります。ただし、骨との結合性や強度の面でチタンに比べるとデータが少なく、適用症例は限られます。

 

上部構造(人工歯)の材料

 

インプラントの上部構造(クラウン)は、咀嚼機能の再建だけでなく、審美性の回復、長期的な耐久性、そして周囲歯周組織との調和も重視して選択されます。素材にはそれぞれの特徴と適応があり、部位や噛み合わせ、審美的要求に応じて適切な材質を選定する必要があります。

 

メタルボンドクラウン

 

金属の下地(コア)に陶材(セラミック)を焼き付けた二層構造のクラウンです。金属による高い強度と、セラミックによる審美性を併せ持つことから、臼歯部(奥歯)を中心に広く用いられてきた実績があります。

 

【メリット】

・咬合力の強い部位でも破折リスクが低く、安定性が高い
・適度な厚みが確保できれば審美性も良好

 

【デメリット】

・歯茎が薄い場合や歯肉退縮があると、金属色が歯茎から透けて見える「ブラックマージン現象」が起きる可能性
・金属アレルギーのリスクが完全には排除できない

補綴学的には、強い咬合圧が加わる第二大臼歯部などにおいて、信頼性の高い選択肢です。

 

オールセラミッククラウン

 

すべてセラミック素材で構成されたクラウンで、金属を一切使用しません。光の透過性が高く、天然歯に近い色調を再現できるため、特に前歯部の審美補綴に適しています。歯茎との境目も自然に馴染みやすく、歯肉縁下にクラウンマージンがあっても審美性を損ないません。

 

【メリット】

・金属アレルギーの心配がない
・歯肉との親和性が高く、自然な見た目に仕上がる
・光の透過性が高く、隣在歯との色調の調和に優れる

 

【デメリット】

・セラミック単体のため、強い力が加わると破折するリスクがある
・咬合力の大きい臼歯部への適用には制限がある

 

審美補綴分野では現在も主力の選択肢であり、特に歯肉の厚みが薄いケースや高い審美性が求められる症例に有効です。

 

ジルコニアクラウン

 

ジルコニア(酸化ジルコニウム)は、強度と耐久性に非常に優れた高機能セラミックです。近年ではCAD/CAM技術の発展により、高精度な補綴物の製作が可能となり、特に咬合力の強い臼歯部や、ブリッジ症例でも広く使用されています。

 

【メリット】

・金属並み、あるいはそれ以上の高い強度がある
・摩耗に強く、長期間の使用でも変形しにくい
・金属を含まないため、アレルギーリスクが低い

 

【デメリット】

・表面が硬いため、対合歯を摩耗させることがある
・光の透過性が低く、審美面ではオールセラミックに劣る場合がある
・噛み合わせが強く干渉する部位では、応力が集中しやすく破折のリスクにも留意が必要

 

ジルコニアクラウンは、咬合再構成や全顎補綴にも対応できる一方、前歯部など審美性が最優先される部位では、オールセラミックとの使い分けが望まれます。

 

インプラントの形状による分類

 

インプラントの形状も種類を分けるポイントの一つです。形状により、骨との初期固定のしやすさや適応症例が異なります。

 

スクリュータイプ

 

スクリュータイプは、ねじ状の形をしたインプラントです。現在最も一般的に使用されており、骨に埋入する際にねじ込むように固定されるため、初期固定が得やすく、治療の成功率が高いとされています。特に骨質が軟らかい場合でも安定性が期待できるのが特徴です。

 

ねじ状の溝は、噛み合わせによる力を分散させやすく、長期安定性にも優れています。ただし、骨の幅が極端に薄い場合や特殊な形態の場合は適応に注意が必要です。

 

シリンダータイプ

 

シリンダータイプは、円筒形で溝が浅い、もしくは溝がない形状です。骨を削った穴に押し込む形で固定するため、初期固定の強さはスクリュータイプにやや劣る場合があります。骨質が硬い部位や、埋入の際にねじ込みの負担をかけたくない場合に用いられます。

 

昔は主流でしたが、現在はスクリュータイプが主流となっているため、使用頻度は低下しています。

 

骨造成GBR

 

GBR(Guided Bone Regeneration)とは、骨再生誘導と呼ばれるもので骨造成術の一種です。骨の厚みや高さが不足している症例に適応され、歯槽骨の再生をはかります。一定の条件を満たしていれば、前歯や奥歯など、どの部位にも適応することが可能です。

 

GBRの特徴

GBRでは、「メンブレン」と呼ばれる特殊な人工膜を使用します。骨が不足している部分に自家骨や人工骨、骨補填材などを詰めたあとにメンブレンで覆うことで、歯槽骨の再生が促されるからです。骨が欠損した部位は「線維芽細胞(せんいがさいぼう)」という歯茎を構成する細胞が先に集まりやすくなっているため、人工膜で遮断する必要があります。その結果、骨を作る「骨芽細胞(こつがさいぼう)」の増殖が促され、骨の再生も適切に進んで行くのです。

 

GBRの流れ

GBRは、次の流れで進行します。

 

STEP1 自家骨の採取

始めに、移植するための骨を患者様のオトガイ部(下の顎の先端)や下顎枝(下の奥歯の外側)から採取します。いわゆる自家骨は、患者様ご自身の細胞・組織から構成されているため、移植による拒絶反応が起こるリスクは限りなくゼロに近いです。

 

STEP2 インプラントの埋入

移植するための自家骨が用意できたら、人工歯根であるインプラント体の埋入を行います。歯茎をメスで切開し、十分な視野を確保した上で顎骨に穴を開けます。顎の骨が正常な場合は、インプラント体がすっぽりと収まりますが、欠損があるとスペースが存在しています。

 

STEP3 自家骨および骨補填材の填入

骨の欠損部に自家骨や骨補填剤を填入して、人工膜であるメンブレンで覆います。GBRによる歯槽骨の再生には半年以上かかるのが一般的です。顎骨とインプラント体が結合するオッセオインテグレーションが起こるまでは待機することになります。

 

サイナスリフト

 

サイナスリフトとは、上顎の骨欠損が認められる場合に適応される術式です。上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ)の一種で、側面からアプローチするのが大きな特徴となっています。歯茎をメスで切開して骨に穴を開け、そこに骨補填材などを充填します。骨の厚みが8mm未満の場合に適応されることが多い術式です。

 

サイナスリフトの流れ

サイナスリフトは、次のような流れで進行します。

 

STEP1 局所麻酔

局所麻酔を施して、痛みを感じない状態にします。

 

STEP2 骨に穴を開ける(開窓)

上顎の側面の歯茎を切開し、専用の器具で骨に穴を開けます。

 

STEP3 骨補填材の充填

骨の再生を促す骨補填剤を穴の中に充填します。

 

STEP4 歯茎を縫合して治癒を待つ

充填が完了したら、歯茎を縫合して骨が再生されるのを待ちます。十分な骨を確保することができたら、人工歯根であるインプラント体を埋入します。サイナスリフトとインプラント体の埋入を同時に行う場合もあります。

 

サイナスリフトのメリット・デメリット

【メリット】
サイナスリフトは、比較的重症度の高い骨不足の症例で、インプラント治療を可能とすることができます。長いインプラントも埋め込みやすくなることでしょう。

【デメリット】
サイナスリフトでは、広範囲な骨造成を行うことから、治癒にかかる期間も長くなります。治療費も比較的高くなる点にご注意ください。

 

ソケットリフト

 

ソケットリフトも上顎洞底挙上術の一種です。上の顎の骨が足りない場合に適応される骨造成術で、骨の厚みが8mm以上あるケースが対象です。骨の不足が比較的軽度であることから、インプラントを埋め込む方向からアプローチできます。手術によって生じる傷口も小さく、サイナスリフトよりも心身への負担が小さいです。

 

ソケットリフトの流れ

ソケットリフトは、次のような流れで進行します。

 

STEP1 局所麻酔

局所麻酔を施して、痛みを感じない状態にします。

 

STEP2 骨に穴を開ける

通常のインプラント治療と同じように、垂直的な方向からドリルで顎骨に穴を開けます。

 

STEP3 骨補填剤の充填

ドリルで穴を開けた部分に骨補填剤を充填します。

 

STEP4 インプラント体の埋入

人工歯根であるインプラント体を埋入して、骨が再生するのを待ちます。3~6ヵ月程度待機して、オッセオインテグレーションが確認できたら、二次オペにあたるアバットメントの装着へと進みます。

 

ソケットリフトのメリット・デメリット

 

【メリット】
ソケットリフトは、インプラントを埋め込む方向からアプローチできるため、侵襲を最小限に抑えられます。施術にかかる費用はサイナスリフトよりも安くなります。

【デメリット】
ソケットリフトを行う場合は、標準的なインプラント治療よりも費用がかかります。手術に失敗すると、上顎洞へと穴を開けてしまうことがあるため十分な注意が必要です。そうしたリスクを回避する上で、歯科医師の実績が豊富である点は必須といえます。

 

ソケットプリザベーション

 

ソケットプリザベーションとは、抜歯後の骨の吸収を抑えるための処置法です。歯を抜いた穴(抜歯窩)に人工骨や骨補填剤を充填して骨の再生をはかります。その名の通りソケット(穴)をプリザベーション(保護)するための処置です。

 

抜歯後の顎の骨の吸収について

 

インプラント治療で、ソケットプリザベーションが必要となる理由は、「骨の吸収」が起こるからです。私たちの骨は顎に限らず、使わなくなったら痩せていきます。失った歯の治療で入れ歯を選択すると顎の骨が徐々に痩せていくのはそのためです。

抜歯をした後にすぐインプラント体を埋め込める即時埋入であればソケットプリザベーションは不要となりますが、そうではないケースもたくさんあります。顎の骨が痩せてしまうと人工歯根の定着も悪くなるため、ソケットプリザベーションのような特別な処置が必要となるのです。

 

ソケットプリザベーションの流れ

 

ソケットプリザベーションは次の流れで進行します。

 

STEP1 抜歯と清掃

保存が困難と診断された歯を抜きます。抜歯窩はさまざまな器具を使ってきれいに清掃します。

 

STEP2 穴に骨補填材を入れる

抜歯窩に人工骨や骨補填材を充填します。

 

STEP3 抜歯窩の保護

抜歯窩をコラーゲンで作られている人工膜で覆います。インプラント体の埋入手術までは、この状態で患部を保護します。

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